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金沢家庭裁判所 昭和58年(家ロ)502号 審判

申立人 中田良子

相手方 中田陽介

事件本人 中田正史

主文

本案審判事件の審判確定まで事件本人の親権者中田陽介の親権者としての職務執行を停止し、その代行者として下記の者を選任する。

金沢市○○×丁目×番×号高橋奈緒子昭和三年五月三日生

理由

一  申立の趣旨

主文同旨の審判

二  判断

イ  本案審判事件および本件事件の一件記録および当庁調査官の調査結果によれば、申立人と相手方は、昭和五一年一一月一三日に婚姻届を了し、その間に長女香(昭和五二年一一月一二日生)および長男である事件本人をもうけたが、申立人が「○○○○○」という宗教に入信したことから、相互の関係が気まづくなり、昭和五六年七月二五日協議離婚という結果となつたのであるが、その際長女および事件本人の親権者は父である相手方と定められており、申立人においても一応これを諒承し、事件本人および長女香は既に離婚前から相手方の両親方に預けられたり、更に相手方が昭和五六年一二月に内山恵子と再婚して後は、相手方、恵子、恵子の連れ子二人と生活を共にしていたが、特に長女香は後妻である恵子に馴染まず、このことに立腹した相手方の折檻から昭和五八年三月八日死亡するに至つたこと、申立人は、前記長女と相手方の関係から事件本人に対する相手方の親権行使に危惧の念を生じ、親権者の変更を求めて本案審判を求めているところ、相手方の後妻である恵子は、昭和五八年三月ころから事件本人および実子二人を連れて富山市の兄の許に同居しているが、事件本人の養育を望み、現に親権者である相手方の代諾を得て事件本人を自己の養子とすることも考慮していること、が認められる。

ロ  以上の経過に照らして考察するに、相手方が単に感情的な要素から事件本人に固執し、申立人に事件本人を委ねることを避けるために恵子と事件本人の養子縁組を計ることがあつては、事件本人の福祉を害すると言わざるを得ず、とりあえず、本案審判の確定まで相手方の親権行使を停止せしめておくのが相当というべきである。よつて、主文のとおり審判する。

(家事審判官 松島和成)

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